こんにちは。元ピラティスインストラクターで、現在はWebライターとして活動しているジュリーです。
ピラティスインストラクターとして活動する中で、「重い症状の方を前に、どう対応すればいいのか分からない」と悩んだ経験はありませんか?
私自身、2年目の頃に人工股関節の手術を控えた高齢のクライアントさんを担当し、不安を抱えながら向き合った経験があります。
試行錯誤を重ねる中で痛みは少しずつ軽減し、結果的に手術を先延ばしにできるほど回復。とても喜んでいただくことができました。
この記事では、その実体験をもとに、重い症状を持つクライアントさんとの向き合い方をまとめています。
私自身、側弯症を抱える立場でもあるため、クライアント目線の気づきも交えています。
同じ悩みを持つ方のヒントになれば嬉しいです。
目次
1. 人口股関節の手術を控えたクライアントさんとの出会い
ピラティスインストラクターになって2年ほど経った頃、私は一人の高齢のクライアントさんを担当することになりました。
その方の症状は、変形性股関節症。医師からは「人工股関節の手術」を勧められている状態でした。
ただ、人工股関節の寿命は約20年と言われています。
「2度の手術はできるだけ避けたい」
「そのためにも、今ある痛みを少しでも軽減したい」
事前のヒアリングで、そうした思いを率直に話してくださいました。
正直なところ、当時の私は、
「本当に私が担当して大丈夫だろうか」
という不安を強く感じていました。
それでも、逃げるわけにはいきません。できることを一つずつ積み重ねるしかないと思い、真剣に向き合うことを決めました。
なぜ変形性股関節症で強い痛みが出るのか
ここで簡単に、痛みの原因を整理します。
股関節は、本来「臼蓋(きゅうがい)」という受け皿に、大腿骨が正しい位置ではまることでスムーズに動きます。
しかし痛みを抱える方の多くは、大腿骨が内側にねじれた状態で固まり、骨同士のスペースが狭くなっています。
その結果、歩くたびに骨がぶつかり、軟骨がすり減って強い痛みが生じます。
私のクライアントさんもまさにこの状態で、歩くだけでつらそうな表情をされていました。
2. 教科書通りに行かない現場|ピラティスインストラクター2年目の挫折
最初は、しっかりヒアリングを行ったうえで、変形性股関節症の特徴や禁忌事項を調べ、ピラティスの教科書を参考にしながら、メニューを組み立てました。
やるべきことはやった。そう思って迎えたレッスン当日でしたが、現実は想像通りには進みませんでした。
「では、マシンに乗ってみましょう」
そう声をかけたものの、マシンに足を乗せるだけで「痛たたた……」と、明らかに痛みが出てしまう様子だったのです。
教科書通りであれば、このあとは股関節の安定性を高めるワークに入る想定でした。
しかし実際には、そのワークを行うためのスタートラインにすら立てていませんでした。
今でこそ、こうした状況は十分に起こり得るものだと分かります。
けれど当時の私は、そこまで具体的にイメージできていなかったのです。
どうすれば、彼女が少しでも楽に動けるのか。
私は一度立ち止まり、メニューもアプローチ方法も、一から練り直すことにしました。
3. 変化の実感 |忘れられないクライアントさんの一言
試行錯誤を続ける中で、その方に少しずつ変化が現れました。
まず、はっきりと感じたのは、歩くたびに顔をしかめていた表情が、次第に明るくなっていったことです。
また、スタジオに入ってくるなり、
「ジュリーちゃん、最近痛みがマシになってきたの。ありがとう」
「今日はこれくらい歩けたの」
と、日常での変化を自分から話してくれるようになりました。
実際、足取りも明らかに軽くなっており、結果として手術を先延ばしにすることができたそうです。
試行錯誤の連続ではありましたが、このような変化につながったことは、私にとって忘れられない、とても特別な経験です。
4. 重い症状のクライアントさんに向き合うための実践アプローチ4選
ではここで、試行錯誤の末にたどり着いた、重い症状を抱える方へアプローチする際の「4つのポイント」をご紹介します。
① プロップ(補助道具)を活用する
既存のエクササイズを、そのまま行ってもらおうとするのは、場合によってはリスクがあります。
痛みや違和感、歪みが出る可能性があるときは、「動きに入る前のセットポジションで補助を入れる」ことが重要です。
例えば彼女の場合、仰向けになると「反り腰」になり、股関節が内旋して痛みが強く出ていました。
そこで、お尻の下に厚めのタオルを敷きました。
それだけで骨盤が後傾気味に安定し、股関節の詰まりが物理的に解消されます。
この状態で動いてもらうと、痛みは出ず、むしろ「気持ちいい」と言いながら動いてくれました。
② 見通しを共有する
クライアントさんは、自分の身体で何が起きているのか分からないまま、不安を抱えてレッスンを受けていることがあります。
不安があると、無意識に身体をかばう動きになり、エクササイズにも集中しづらくなります。
だからこそ、「何をするのか」「なぜそれを行うのか」をあらかじめ伝え、見通しを持ってもらうことが大切です。
その日の身体の状態を確認したうえで、「今はこういう状態なので、今日はここを目指しましょう」と、レッスン全体の流れを簡単に共有します。
レッスン中
新しいエクササイズを取り入れる際は、「この動きは何のためのものか」を、できるだけ分かりやすく説明します。
レッスン後
レッスン後に身体の変化を言葉にして伝え、「次はここを目指しましょう」と、次回までのロードマップを共有します。
③ ハードルの低い宿題を出す
ピラティスのレッスンは、週に1回程度という方がほとんどです。
残りの6日間を何も意識せずに過ごすと、身体はどうしても元の状態に戻ってしまいます。
そこで効果的なのが、ハードルの低い宿題を出すことです。
ポイントは、5分もかからず、特別な準備がいらないこと。
ピラティスマットを敷かなくてもできるエクササイズがおすすめです。
私の場合、クライアントさんには
1日5分
ベッドの上で、寝たままできる
レッグサークルというエクササイズを、宿題としてお伝えしました。
その結果、毎日無理なく継続してくださり、股関節の状態も、少しずつ整っていったと感じています。
④ こまめかな声かけをする
声かけをこまめに行うことも、大切なポイントです。特に、痛みや症状を抱えているクライアントさんの場合は、
「今どうですか?」「痛みはありませんか?」
と、定期的に声をかけるようにしていました。
というのも、インストラクターであっても、実際にその身体になってみなければ分からないことは多いからです。
だからこそ、私自身の判断よりも、本人がどう感じているかを何より大切にするようにしていました。
その積み重ねもあってか、
「このエクササイズ、すごく気持ちいい」「ここが伸びている感じがする」
と、クライアントさんのほうから感覚を言葉にしてくれる場面が増えていきました。
私自身も、「なるほど、こう感じるんだな」と、とても勉強になりました。
5. ピラティスインストラクターとして大切なマインドセット
重い症状を抱える方を担当すると、
「治さないと…」と、強いプレッシャーを感じてしまうこともあると思います。
けれど、ピラティスインストラクターの役割を一度整理してみると、その気持ちは少し軽くなるはずです。
ピラティスインストラクターの役割は、「治す人」ではなく、「正しい身体の使い方を伝える人」。
症状そのものを治そうと、無理に背負い込む必要はありません。
大切なのは、その症状を引き起こしている「動きの癖」や「姿勢の乱れ」を、ピラティスのエクササイズを通して、少しずつ紐解いていくことです。
もし不安になったときは、この役割の定義を思い出してみてください。
それが、インストラクターとして前向きに向き合い続けるための、大切なマインドセットになります。
6. クライアント目線で考えるピラティスインストラクターに必要な資質
目の前のクライアントさんに、どれだけ真剣に向き合えるか。
私は、これがピラティスインストラクターとしていちばん大切な資質だと思っています。
私自身、側弯症という症状を持っています。
あるとき、とても勉強熱心な、ピラティス歴1年ほどの後輩インストラクターのプライベートレッスンを受ける機会がありました。
正直に言うと、それまでに受けてきた、どのインストラクターのプライベートレッスンよりも良かったのです。
実際、レッスン後には側弯の状態が驚くほど改善していました。
その後輩は、私が受講すると知ってからの約1週間で、側弯症に関する分厚い専門書を3冊読み込んでいたそうです。
レッスン中も、私の身体に真剣に向き合ってくれました。
感謝の気持ちと同時に、深く心を打たれたのを覚えています。
「真剣に向き合ってくれている」と感じられるインストラクターは、やはり特別だと感じた出来事でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ピラティスインストラクター2年目の私が、人工股関節の手術を控えた高齢のクライアントさんを担当した実体験をもとに、重い症状をお持ちの方へのレッスンで意識していたポイントや、前向きに指導を続けるためのマインドセットをご紹介しました。
少しでも、日々のレッスンに迷ったときのヒントになれれば幸いです。


