健康保険の取り扱いが厳しくなり、保険診療に頼った経営に限界を感じていませんか?
実際に整骨院でもダイエットメニューやパーソナルトレーニングなどの自費メニューを取り入れる院が増えてきています。
私も10年前に整骨院を開業しましたが、わずか1年で閉めて整体院に業態変更しました。
開業4年目にピラティスを導入し、今では整体とピラティスを組み合わせたコンディショニングサロンを経営しています。
整骨院のころと比べて、時間もお金も余裕ができました。
この記事では、私が柔道整復師として感じた「保険診療の限界」から、ピラティスを取り入れて自費移行するまでの流れをお話します。
目次
柔道整復師がぶつかる「壁」とは?
国家資格を持ち、技術にも自信がある。それでも経営が思うようにいかない理由は、努力が足りないからではありません。
柔道整復師という職業が構造的に抱える「3つの壁」が原因です。
施術できるのは「怪我だけ」という現実
柔道整復師の業務範囲は、法律によって決まっています。
健康保険の対象となるのは「骨折」「脱臼」「捻挫」「打撲」「挫傷」であり、急性または亜急性の外傷に限られています。
ですが、整骨院に来院される方の多くは、保険適用外の慢性的な肩こりや腰痛、体の疲れ、猫背や反り腰といった姿勢改善を目的としています。
保険と自費を組み合わせた経営をしている院も多いですが、年々保険の取り扱いが厳しくなっているのが現状です。
整骨院を利用する方のなかには「安くマッサージしてくれるところ」という認識の方もいらっしゃいます。
実際に私が整骨院を経営していたときに、他の整骨院から転院してきた患者さんに前の整骨院に通っていた理由を聞くと「500円で揉んでもらえるから」「整骨院じゃ治らない」という答えが返ってきました。
来院される多くの方の悩みの原因は、症状を訴えている部位とは別にあることが多く、保険適用外のニーズを抱える方が多いにもかかわらず、保険適用内だけで経営していくのは難しいのが現実です。
整骨院経営の限界
整骨院で収入を増やす方法は、1日の来院数を増やすことです。
ですが1日に施術できる人数は限られています。
私が1人で整骨院を経営していたときの平均は17人で、最多でも27人が限界でした。
来院数を増やすためには、スタッフを増やすしかありません。ですがその分の人件費や固定費もかかります。さらに研修をしてやっと育てたのに辞めてしまうリスクも常につきまといます。
新しく自費メニューを増やすときも注意が必要です。
よく見る自費メニューに施術時間の延長があります。
10分1,000〜1,500円に設定している整骨院もありますが、怪我の施術料金は、時間が長くなったからといって追加料金を取ることはできません。
集客面でも厚生労働省のガイドラインにより、虚偽・資格の誇張・ビフォーアフターなどの比較・お客様の声などは禁止されており、違反すると30万円以下の罰金や業務停止命令の対象になる可能性があります。
そのためホームページやチラシを作成する際も、柔道整復師免許以外の資格や実績、お客様の声を掲載することができず、他院との差別化が難しいのが現状です。
保険診療からピラティスへ
保険診療を辞めることは不安だと思います。実際に私も保険診療を辞めて、整体とピラティスに移行する際は、不安がなかったと言えば嘘になります。
ここからは、私が保険診療をなぜ辞めたのか、どのようにピラティスへ移行していったのかをお話します。
整骨院から整体院へ
私が開業してから1年で保険診療を辞め、自費診療に業態を変更する際には、迷いもありました。
せっかく専門学校に行って国家資格を取ったのに、柔道整復師の資格を使わないのはもったいないという気持ちもありました。
それでも、目の前の患者さんにもっと深くアプローチしたくてもできないもどかしさが積み重なり、保険診療を辞めて自費診療へ業態の変更を決意しました。
切り替えたことで、一人ひとりの方としっかり向き合う時間が持てるようになり、より深いアプローチができるようになりました。
この決断が、その後の方向性を大きく変えるきっかけになりました。
なぜ「整体」だけでは不十分なのか?
保険診療を辞めて、整体院として軌道に乗ってきたころ、新たな問題に気づきました。
それは「整体院依存」という問題です。
「先生のところに行けば身体が楽になる」お客様にそう思ってもらえることは嬉しいことですが、「先生がいないと良くならない」「痛みが出たら先生のところに行けばなんとかしてくれる」という状態になってしまいます。
整体で行うのは「手技」がメインになります。
手技で身体の状態を整えても、日常の「座り方」「歩き方」「立ち方」などの動作が変わらなければ、痛みが再発する可能性が高くなります。
手技の種類は数多くありますが、共通することは筋肉を鍛えることも神経を発達させることもできないということです。
私の目指す役割は、ずっと通わせ続けることではなく、患者さん自身が自分の身体をケアできる状態に導くことだと思っています。
その答えを探す中で出会ったのが、ピラティスでした。
自費移行を成功させた「高単価×継続率」の仕組み
実際にピラティスを導入し、整体×ピラティスへ移行する中で意識したことがあります。
「プログラムの共有」「メニューのハイブリット化」「価格の設定」の3つです。
まずプログラムの共有です。
既存の患者さんに対し「なぜ整体だけでなく、ピラティスが必要なのか」悩みを改善するまでの順番と目的を明確に共有しました。
次にメニューのハイブリット化です。
いきなりピラティスのみ行うのではなく、「整体で身体を整え、ピラティスで身体の動きを学習する」という形を取りました。
整体には整体の良さがあり、ピラティスにはピラティスの良さがあります。2つを組み合わせることで患者さんの負担が軽減し、改善までの期間を短縮することができます。
そして価格の設定です。
90分15,400円に価格設定をしました。最初からこの価格だったわけではありませんが、ピラティスを取り入れたことで「今の悩みの改善ではなく、これから先ずっと悩まない身体づくり」を提供できるようになりました。
その結果、「価格」ではなく「価値」で選ばれるようになりました。
一時的に売上が落ちた時期もありましたが、それ以上に「身体を本気で変えたい」という方に選ばれるようになり、多くのご紹介もいただけるようになりました。
今では経営が安定しただけでなく、家族との時間も作ることができています。
なぜ「ピラティス」なのか?

なぜ、私がピラティスを選んだのか。
それは、ピラティスがリハビリから生まれたメソッドであり、身体の基礎を作ることができるだけでなく、他のエクササイズと組み合わせることで身体の機能改善の効果をさらに高めることができるからです。
施術ではできない「身体の変化」をつくれる
施術は、痛みの軽減や回復を促進することには優れていますが、筋肉をつけることも、身体の動きを変えることもできません。
しかし、ピラティスは身体の深層筋(インナーマッスル)を意識し、関節の動き、動作のつながりを学習することで日常の動きを変えることができます。
例えば、骨盤底筋や腹横筋といった深層筋が正しく機能するようになることで、慢性的な腰痛の原因となっていた姿勢や動作パターンそのものを変えることができます。
股関節の可動域が改善されれば歩き方が変わり、肩甲骨の動きが整えば首や肩への負担が軽減されます。
施術で痛みや緊張を取るだけでは届かない「根本からの変化」が、施術とピラティスを組み合わせることで可能となります。
ここで柔道整復師としての専門知識が強みになります。
解剖学・運動学の知識を持つ柔道整復師は、どの筋肉がどのように機能していないのかを触診で確認しながら指導することができます。
「なぜこの動きが必要なのか」を身体の構造から説明ができると、一般のピラティスインストラクターにはない圧倒的な差別化になります。
整体に依存している状態では、身体を変えることはできません。
自分の身体を自分で動かせるように自立することが重要です。
ピラティスは「掛け算」ができる
ピラティスのもうひとつの大きな特徴は、他のエクササイズや専門知識との相性が非常によいという点です。
ピラティスの動きは体幹の深部筋群を活性化することを基盤としているため、動作の「土台づくり」として機能します。
この土台があることで、他のエクササイズや指導法の効果がさらに高まります。
例えば私の場合、マットピラティスと脳トレを組み合わせた独自のメニューを開発しました。
ピラティスで体の軸と深部の感覚を整えたうえで脳トレのアプローチを加えることで、体と神経系の両方に働きかけることができ、どちらか単独で行うよりも早く、身体に変化が現れます。
柔道整復師であれば、解剖学・運動学の知識をそのまま活かして、自分だけの「ピラティス×◯◯」の組み合わせを設計できます。
これまで積み上げてきた、手技、姿勢分析、トレーニング法と言ったすべてが、ピラティスと掛け合わさることでより大きな価値を生みます。
患者さんとのエピソード
ピラティスを取り入れて3年目のころ、ご紹介で来店された50代の女性の方のお話をさせてください。
この方は40代から健康意識が高く、パーソナルジムにも整体にも継続して通っていました。
それでも首の痛みと股関節痛が改善されないどころか、「股関節はどんどん悪くなっている」と感じていたそうです。そんなときに知人からご紹介で来店されました。
来店のきっかけは、紹介してくれた方が東京からわざわざ通っていることへの興味だったそうです。
「いったい何をするところなんだろう」と思ったそうです。
私が最初のセッションでお伝えしたのは「一度、身体の基礎を壊して作り直します。そのため、一時的に体型が崩れます」です。
パーソナルトレーニングで過度に負荷をかけてきたことで筋肉のバランスが崩れており、力を抜けないことが痛みの原因のひとつになっていました。
そのため、パーソナルジムでのトレーニングとは真逆の、地味で細かい動きから始めました。
セッションは週1回、90分。トレーニング60分、整体30分という構成で進めました。
1ヶ月が経つころには、何年も悩まされていた股関節の痛みが半分以下に。
3ヶ月が経つころには、痛みが消失しました。
周りの友人から「歩き方が変わったね」「身体のラインが変わった」と言われるようになり、その言葉をとても喜んでくださっていました。
私のセッションは、地味でつらいこともあります。ただ、今だけを変えるのではなく、これから5年・10年先の人生を変えることを目的にしています。
そんな私の考えを信じてついてきてくれたこの方からは、その後も多くのご紹介をいただきました。
感謝の気持ちをお伝えすると、「先生のおかげで、私は今こうして好きなことができているんだから、こちらこそありがとう」でした。
この言葉を聴くために、私はこの仕事を続けています。
そして、今の私があるのは、その方との出会いのおかげです。
最後に
今、整骨院経営は転換期を迎えています。
保険診療が厳しくなり、自費への移行が進んでいくと思います。
ピラティスへの移行は、今までやってきたことを辞めることではなく、柔道整復師として、治療家として積み上げてきた知識と経験を活かしながら、新しいアプローチを生み出すことです。
ピラティスにはマット・リフォーマー・チェア・タワーと種類があります。最初からすべての資格を取る必要はありません。まずはマットピラティスから始め、患者さんのニーズに合わせて少しずつ広げていくことをおすすめします。
これまで積み上げてきた知識と経験は、ピラティスと掛け合わさることで必ず新しい価値になります。
まずは小さな一歩から始めてみてください。


