ピラティスインストラクターとしてキャリアを築く際、
「正社員として安定した働き方を選ぶべきか」
「副業やフリーランスで自由に活動するか」
「スタジオ勤務から独立・開業を目指すか」
といった選択に迷う方は少なくありません。
ピラティスに魅力を感じ、「好きなことを仕事にしたい」「身体の知識を深めながら人の役に立ちたい」と考える一方で、実際の働き方や将来像が見えず、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
近年は、スタジオ勤務だけでなくオンラインやリモートレッスンなど、ピラティスインストラクターの働き方が大きく広がっています。
一方で、理想と現実のギャップから、資格取得後まもなく離職してしまうケースがあるのも事実です。
本記事では、現役のピラティスインストラクターの方はもちろん、これから目指す方に向けて、主な働き方の種類やメリット・デメリット、離職の背景から見える業界のリアルまでを、できるだけ分かりやすく解説します。
将来の選択に迷ったときの判断材料として、ぜひ参考にしてください。
ピラティスインストラクターの主な働き方
正社員として働くメリットと現実
近年、ピラティスの専門スタジオが増えたことで、正社員でピラティスインストラクターとして働ける環境が増えてきました。
正社員として働く最大のメリットは、安定した収入と福利厚生が得られる点です。
毎月決まった給与が支給され、社会保険や有給休暇などの制度が整っているため、生活基盤を安定させやすい働き方といえます。
特に、これからインストラクターとしてキャリアをスタートさせる方にとっては、大きな安心材料になります。
主な勤務先は、ピラティススタジオをはじめ、大手フィットネスクラブや医療系・リハビリ関連施設などです。
こうした施設では、マニュアルや研修制度が整っている場合も多く、経験が浅い時期でも基礎から学びながら現場経験を積むことができます。
一方で、
- レッスン内容や担当クラスを自由に選びにくい
- 勤務時間や休日が固定されやすい
- 昇給やキャリアアップの幅が限られることがある
といった現実もあります。
「まずは安定を優先したい」「指導経験をしっかり積みたい」という方には向いていますが、自由度を重視する方は慎重に検討する必要があります。
フリーランスとしての働き方とは
フリーランスのピラティスインストラクターは、複数のスタジオを掛け持ちしたり、個人クライアントを持ったりと、比較的自由度の高い働き方が可能です。
得意分野や専門性を活かしながら、レッスン内容や働く時間を調整できる点は大きな魅力です。
その反面、
- 収入が月によって変動しやすい
- 集客や営業を自分で行う必要がある
- 確定申告などの事務作業が発生する
など、自己管理能力が強く求められます。
特にこれからインストラクターを目指す方の場合、資格取得直後から安定した収入を得るのは簡単ではありません。
そのため、最初はスタジオ勤務や副業で経験を積み、徐々にフリーランスへ移行するケースが多く見られます。
副業で活動する選択肢
本業を持ちながら、副業としてピラティスインストラクターを続ける選択肢もあります。
週末や夜間を中心にレッスンを行うことで、収入面のリスクを抑えつつ実践経験を積むことができます。
副業のメリットは、
- 安定収入を確保しながらチャレンジできる
- 自分に合った働き方かどうかを試せる
- 無理のないペースで経験を積める
点にあります。
一方で、
- スケジュール調整が難しい
- 体力的な負担が大きくなりやすい
といった課題もあります。最近では、オンラインレッスンや出張レッスンなど、副業でも取り入れやすい働き方を選ぶ方も増えています。
働く場所別にみるインストラクターの実態
スタジオ勤務の特徴と選び方
スタジオ勤務と一口にいっても、給与体系や客層、働き方はスタジオによって大きく異なります。
時給制・歩合制・固定給など報酬形態の違いは、事前に必ず確認しておきたいポイントです。
また、
- 固定シフトかどうか
- 集客ノルマの有無
- 研修制度やフォロー体制
なども、長く働き続けるうえで重要な判断材料になります。
スタジオの理念や運営方針、雰囲気が自分に合っているかどうかも、働きやすさに大きく影響します。
リモートレッスンの可能性と課題
コロナ禍をきっかけに、オンラインやリモートレッスンは急速に普及しました。
現在では、場所に縛られず全国のクライアントとつながれる働き方として、ひとつの選択肢になっています。
リモートレッスンのメリットは、
- 移動時間が不要
- 地方や海外のクライアントともつながれる
- ライフスタイルに合わせて働きやすい
点です。
一方で、配信環境の整備や画面越しでの指導スキル、集客・マーケティング力が必要になるため、「誰でも簡単に稼げる」というわけではありません。
対面指導の経験を積んだうえで取り入れると、より安定しやすくなります。
自分のスタジオを開業するには
独立して自分のスタジオを開業する働き方は大きなやりがいがある一方で、リスクも伴います。
物件取得、マシンや備品の購入など、初期投資が必要になるのが現実です。
また、レッスンだけでなく、
- 経営管理
- 集客や広報
- 顧客対応
など、運営に必要なことを幅広く担う覚悟が求められます。
そのため、十分な現場経験を積みながら、少しずつ準備を進めることが成功のポイントです。
ピラティス業界の離職とその背景
離職の理由とは？
ピラティスインストラクターの離職理由として多いのが、収入の不安定さと将来性への不安です。
理想を持って資格を取得したものの、働き方を具体的に描けないままスタートし、思うように仕事が得られず挫折してしまうケースもあります。
また、
- 職場環境や人間関係のミスマッチ
- 養成コース修了後のサポート不足
なども離職の要因として挙げられます。
離職を防ぐ働き方の工夫
離職を防ぐためには、最初から「自分に合った働き方」を選ぶことが重要です。
安定を重視するのか、自由を重視するのか、成長や挑戦を優先するのかを明確にしましょう。
さらに、
- 継続的なスキルアップ
- インストラクター同士のコミュニティ参加
- 中長期的なキャリアプランを持つこと
が、長く続けるための支えになります。
ライフステージの変化に寄り添いながら続ける、ピラティスインストラクターという働き方
今回は、私がピラティスを始めた頃にレッスンを受けていた先生の一人、C先生の事例をご紹介します。
C先生はインストラクター歴15年。子育てやご自身の体調の変化と向き合いながら、その時々に合った働き方を選択し、長く活動を続けてこられました。
15年前のピラティス業界と、インストラクターの働き方
今から15年ほど前は、現在のようにピラティス専門スタジオが多く存在する時代ではありませんでした。
そのため、正社員としてピラティスインストラクターとして働く環境はほとんどなく、活動の場を自らつくる必要がありました。
当時、お子さんがまだ小さかったC先生は、資格取得後に公共施設を借りてレッスンをスタート。
お子さんの同級生のお母さんたちを中心に、サークルとして活動を始めました。家庭と仕事を両立しながら、無理のない形でインストラクターとしての第一歩を踏み出されたのです。
乳がんをきっかけに広がったキャリアの選択肢
サークル活動が軌道に乗り、「さらにスキルを高めたい」と考え始めた矢先、C先生は乳がんを患います。
この経験をきっかけに、「やりたいことは迷わず行動する」という価値観を大切にするようになりました。
治療と向き合いながらもサークル活動を継続し、スポーツクラブでアルバイトとしての指導も開始。
当時はピラティスの人気が低迷していたこともあり、パーソナルトレーニング、バレトン、ヨガなど複数の資格を取得しました。
これにより、ピラティスに限らず幅広い運動指導スキルを身につけ、グループレッスンの魅力にも惹かれていきます。
コロナ禍での働き方の転換とオンラインレッスン
コロナ禍は、スポーツクラブ業界にも大きな影響を与えました。アルバイトとして勤務していたC先生の仕事も激減し、「自分で働き方を選び直す必要性」を感じるようになります。
そこで、働き方をアルバイトから業務委託へ切り替え、オンラインレッスンも開始。環境の変化に柔軟に対応しながら、指導を継続できる仕組みを構築していきました。
スタジオ開業と、これからのピラティスインストラクター像
その後、少しずつご自身でも施設を借りてレッスンを行い、1年半前には次世代型ピラティスマシン「エンコンパス」を導入したスタジオをオープン。
現在は、15年前に始めたサークル活動、業務委託でのスポーツクラブ指導を継続しながら、スタジオ運営も行っています。
さらに、乳がんを経験したからこそできる支援として、乳がんの方のサポートや予防活動にも積極的に取り組み、多くの方の健康増進を支えています。
ライフステージが変わっても、ピラティスインストラクターは続けられる
C先生の歩みは、ライフステージや体調の変化があっても、働き方を柔軟に選ぶことで長く活動できることを教えてくれます。
サークル活動、スポーツクラブ、オンラインレッスン、スタジオ開業と、選択肢を広げながらキャリアを積み重ねてきた姿は、これからインストラクターを目指す方や、働き方に悩む方にとって大きなヒントになるはずです。
まとめ
ピラティスインストラクターには、正社員・フリーランス・副業など多様な働き方があります。
スタジオ勤務・オンライン・独立開業など、働く場所の選択肢も広がっています。
離職の背景には働き方のミスマッチがあり、自分に合ったスタイル選びがとても大切です。
- 自己分析を行い、「安定・自由・成長」のどれを重視したいかを明確にする
- それぞれの働き方のメリット・デメリットを理解したうえで選択する
- まずは副業やスタジオ勤務から始め、段階的にキャリアを広げるのも一つの方法
ピラティスインストラクターは、ライフステージの変化に合わせて働き方を柔軟に変えられる職業です。
自分に合ったペースとスタイルで、長く続けられるキャリアを築いていきましょう。
